広島大学附属三原中学校では、昨年度よりFlat for Educationを全学年でご利用頂いています。音楽科の井上翔太先生に、導入までの経緯と三原中学校での取り組みについてお伺いしました。
➖ まずは三原中学校の特徴を教えてください。
そうですね、うちの学校は付属の幼稚園・小学校・中学校が同一敷地内にあるんです。幼稚園から中学校まで上がってきている生徒も多く、家族のような横のつながりはもちろん、行事や係り活動を通して縦のつながりもあるのが特徴です。
頭を悩ませた創作活動こそがFlat活用のきっかけ
➖ Flat for Educationの導入を考えるきっかけはありましたか?
はい、授業の中で創作をしますが、創作というのは完璧な作品を作ることが目的ではありません。創作の過程の中で生徒たちが思考し、判断するということに重きを置く分野です。そのため、どうしても形で残せること、そして生徒が達成感を味わうために音で出せることが必要になります。
以前は、リコーダーで演奏しながら創作するという授業をしてみたこともありました。しかし、あまり生徒に満足感がなく、どうしてもリコーダーの技量に合わせて創作することになってしまっていました。本当に創りたいものが創れず、最初から諦めてしまう生徒もいました。それで「創作どうやったらいいのかな〜?」と考えていました。
➖ なるほど、そのタイミングでFlat for Educationを見つけて頂いたんですね。
はい。ICTを活用してより良い創作活動ができないか、と考えたとことが始まりです。他のアプリなども検討しましたが、うちの学校ではクロームブックのタブレット端末を使用している関係でアプリのインストールができません。そんな中、ブラウザで完結するものがないかとインターネットで検索していて見つけたのがFlat for Education (以下Flat)でした。
➖ 様々なツールがある中でFlat for Educationを選んだ決め手はありましたか?
やはり、ブラウザ完結すること、クロームブックで使えることこれが1番です。
そして、学校と家とが繋がるというのも大きいですね。学校で創っていた作品の続きが家でもできる。逆に、家で創ったものを学校に持って来ることもできます。学校ではタブレットで、家ではパソコンやスマホからでも取り組める。いつでもどこでも取り組めるという点はメリットだと思います。
場面ごとに生徒にあったツールを使い分け
➖ 楽譜が作成できるツールを探していた理由というのはありますか?
視覚的なツールの方が良いという生徒も多くいて、小学校3、4年生までなら問題ないと思います。ただ、高学年以降になると視覚的なことが逆に邪魔になってきて、音で考えて欲しいところを形で考えてしまうことがありました。
➖ 例えばどんな時ですか?
音楽を創るのではなくて、絵を描いてそれが結果的に音楽になってしまっている生徒も出てくるんですね。偶然性は高いですが、曲としてまとめたり、思考していったりする時に視覚性というのが邪魔になるなと思っていました。
Flatにはそれがなく、曲として成立することが前提になっていますよね。そこはすごくFlatのメリットだと思っています。ただ、音の重なりなどは五線譜ではなく視覚的な方が分かりやすいう側面もあるので、他のツールも合わせて場面に合わせてそれぞれ使っています。
➖ 目的に合わせて様々なツールを使い分けているんですね。井上先生はもともとパソコンや新しいツールには強いほうでしたか?
もともと得意というわけではないのですが、物おじしない性格なので、とりあえずやってみる、試してみるという感じですね。 後は、近隣の附属中学校でもFlatが導入されていたり、他校の興味深い研究・授業を自分の授業の参考にすることもあります。
生徒が主体的に思考できる環境で理解力が向上
➖ 実際にFlat for Educationを使い始めて、授業で変わったことはありましたか?
生徒が音価を理解して活動できるようになりました。
今までの創作の授業では、生徒から「こんなリズムにしたい!」と口頭でリズムを言われたら、教員の方でそのリズムを音符にして書いてあげるしかありませんでした。Flatでは生徒が自分で音符を入力してみて、聴いてみて、思っていたのと違ったら消せば良い。自分で試して確認できる、そこが生徒の音価の理解につながっていると思います。
あとは、例えば「タカタカ」というリズムを16分音符ではなくて4分音符を4つ入力してテンポを240に設定してみる生徒もいたり。生徒なりに一生懸命思考して取り組んでいるところが見えて、授業者として嬉しい限りです。
➖ 井上先生の授業に夢中になっている生徒が想像できますね。授業中の生徒様の反応はいかがですか?
やはりデジタルネイティブの世代なので、「ちょっと自分でやってみます」という感じで始めて、どんどん適応して行っている生徒が多いですね。ショートカットキーの機能も自分たちで発見して使っていたので、抵抗はないなと感じます。
課題管理がしやすいGoogle Classroomとの連携
➖ ではここで、実際に使い始めてみて井上先生が1番気に入っている機能を教えてください。
Classroomとの連携です。 連携することでFlatからClassroomに課題が出せて、出した課題はClassroomからも確認できます。最初はFlatでの課題作成に手間取りましたが、何回か練習すれば問題なく出せるようになり、提出状況もわかりやすいので非常に良いと思います。
新たな視点での鑑賞と協働創作
➖ 実際にはどのような授業でご利用頂いていますか?
創作の授業の他に、よく鑑賞の授業の中でも体験的な活動としてFlatを利用します。 例えば、ベートーヴェンの「運命」を鑑賞して動機について学ぶ授業です。
その中で、「動機を10回以上使って創作する」という課題を出します。そうすると、生徒たちの聴き方が変わるんです。
自分たちが創る立場になると、「自分たちは10回使うだけでも大変だったのにベートーヴェンは第一楽章で240回も使っている!すごい!」という感想が出てくるんです。作曲者の視点で作品を捉える、楽曲の構造を理解するということに役立っていますね。
そして、最近試してみて面白かったのが「故郷」のアレンジです。
A: 「うさぎ追いしかの山」
B: 「こぶな釣りしかの川」
C: 「夢は今もめぐりて」
D: 「忘れがたき故郷」
というふう4つに分けて、4人1班のグループ内で担当を決めます。それぞれ自分の担当箇所をアレンジして、4人分の出来上がったものを合わせるという活動です。音楽の難しいところで、グループで1つの作品を創るということはあっても、パッチワークみたいにそれぞれが創ったものを持ち寄るということは今までできませんでした。それがFlatでは可能なので、とても新しくて面白い活動になりました。
コツは生徒が好きなものから始めること!
➖ 生徒様も使いこなしていますね!
生徒たちが五線譜にふれる経験を与えられるのはすごく良いことだ思っています。最初は、五線譜アレルギーを取っ払うためにあまり使わない方が良いのかなと思っていたんですが、やはり音楽の授業では取り組みを残していくということが大事になります。
➖ やはり最初はアレルギーがありましたか。
あります、あります笑。
最初は、夏休み期間になんでも良いから自分の好きな曲を入力してきなさいという課題を出しています。短くても良いので自分の好きな曲から始めて、聞こえてくる音と五線譜のつながりを理解するところがスタートです。
主体性を後押しするFlat for Education
➖ 最後に、Flat for Educationのご感想を教えてください。
生徒の主体性を後押ししているところがすごいなと思います。
吹奏楽部で取り扱っている作品に編曲時にカットされている部分があるのですが、生徒が自分から「私、創ってきたいです!」と言ってくれて、楽器を追加してアレンジしてFlatでカットされた部分を創ってきてくれたんですよね。
それを実際に吹奏楽部で演奏してみると、「自分たちのアレンジした音楽が曲になっている!」と感動していました。生徒たちがいつでもどこでも自分たちでできるし、共同編集も面白いところがFlatの良さだと思います。
Flatには本当に感謝していて、生徒は自宅でも夢中に取り組んでいるという声を聞きました。何時間もかけて、自分の納得がいくまで作品をつくったり自分の好きな曲を自分のアレンジで表現したりしている生徒もいます。中には、私も驚くほど音楽を創作するアイデアにあふれ、音楽に対する感性が豊かな生徒もたくさんいます。保護者の方も、お子様が夢中になってどんどん作品を生み出す様子に感動されていて、私もFlatに出会えて本当に良かったなと思っています。
井上先生、授業の様子や生徒様の反応まで詳しく教えて頂きありがとうございました!まだFlat for Educationをお試しになったことがない先生は、ぜひ無料トライアルで便利な機能をご体験ください。