ピアノを習ったことがない生徒が、授業の中で自分だけのメロディをつくり、聴き返し、自ら改善していく。そんな光景が、愛知県春日井市立高森台中学校の音楽の授業で日常になっています。

同校で音楽を担当する菅利行先生は、Flat for Educationの導入によって、音楽経験の有無に関わらずすべての生徒が創作活動に向き合えるようになったと話します。

変化のきっかけは、Flat for Educationの導入でした。GIGAスクール構想で整備された1人1台端末と、教育クラウドを組み合わせることで、菅先生の音楽の授業は大きく変わりました。この記事では、その背景と、Flatを選んだ理由をご紹介します。


菅利行先生のプロフィール

春日井市立高森台中学校 音楽科教諭・吹奏楽部顧問 菅利行先生

教員歴16年。令和4年度から4年間、文部科学省から研究開発学校の指定を受け、GIGAスクール構想により整備された1人1台端末やクラウド環境を効果的に活用して情報活用能力を育成することを目標とした研究に学校として取り組む。現在、中学1〜3年生(8クラス・274名)を担当。Flat for Educationは令和3年(2021年)、同僚の紹介をきっかけに導入。


課題だった「創作の壁」—経験のない生徒をどう動かすか

中学校の音楽の授業で「旋律をつくろう」という課題を出したとき、最も難しいことの一つとして「音楽経験の差を超えること」があるのではないでしょうか。ピアノや他の楽器を習っている生徒は手が動きますが、そうでない生徒は何から始めればいいかわかりません。

菅先生が以前感じていたもどかしさは、まさにそこにありました。

「作り上げている途中って、当然変な音が鳴る可能性だってあるし、どうなるんだろうっていう不安もある。じゃあ歌うかって言われたら歌えないし、ピアノで弾くかってなると、ピアノは教室に1台しかないし。じゃあリコーダーで吹くかっていうと、みんなの前じゃ(恥ずかしくて)吹けない。再現ができなくて、結局どんな仕上がりになっているのかよく分からないまま終わってたところがありました」

実は菅先生ご自身も、演奏の専門家ではあるものの、作曲の専門教育を受けたのは大学初期の頃。次のように率直に話します。

「大変お恥ずかしながら、作曲の専門じゃないので、正直「創作」は避けて通ってたんです。生徒に質問された時にちゃんとフィードバックできなかったらどうしようっていう不安がすごくありました」

多くの音楽の先生が共感されるお悩みではないでしょうか。


Flatを選んだ決め手:「楽譜に自然に触れさせる」

菅先生は複数の音楽制作ツールを検討した末、Flat for Education一本に絞りました。その決め手は、読譜力の育成にあったと話します。

Flat導入前、菅先生のクラスでは読譜に関してこんな状況があったと話します。

「こういう時、演奏中に(タイミング)がずれて、先に歌い出しちゃう子がいるんです。じゃあこれって何か調べてみようかと促し、教科書で調べて初めて『フェルマータ』と分かる。でも、意味が分かるっていうぐらいの程度で、実践するときのイメージがわかなかったり、正直ドレミは読めませんみたいな状態の子がやっぱり多かったですね」

読譜力の不足は、創作の授業だけでなく、歌唱など他の分野にも影響します。だからこそ菅先生は、創作の授業を通じて、生徒に自然と楽譜に触れさせることを重視しました。

「Flatだと、旋律を作る中で楽譜に触れざるを得ないので、自然と読譜力が身についていくんです」

他のツールでは楽譜に触れないまま曲が完成してしまうことへの懸念があったと話します。

「世の中に出てったときに何が生きるかを考えたら、やっぱり楽譜だろうなという考えがあって、最終的にFlatを導入することにしました」

いきなりの五線譜は、まだ慣れていない生徒にとって難しくなかったのですか?という問いかけをすると、そのような生徒の背中を押してくれたのは「バーチャルピアノ」の存在だと明かしてくれました。五線譜の読み方はわからなくても、小学校の鍵盤ハーモニカで親しんだ鍵盤のイメージは多くの生徒が持っています。そのなじみのある鍵盤から音を入力できることが、最初の一歩を踏み出す後押しになっているようです。

Flat for Educationのバーチャルピアノ機能(楽譜エディタ画面下部の鍵盤入力UI)
【Flat for Educationのバーチャルピアノ機能】楽譜エディタ画面下部に表示されるバーチャルピアノの鍵盤をクリックして音符を入力・確認できます​

まとめ

世の中に出てったときに何が生きるかを考えたら、やっぱり楽譜だろうな

菅先生がFlat for Educationを選んだ決め手は、「読譜力」という一生涯役立つ土台を、生徒全員に自然と届けられることでした。

愛知県春日井市立高森台中学校では、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末と教育クラウドを組み合わせ、バーチャルピアノという馴染みのある入り口から、経験の差を超えて生徒全員が楽譜に触れられる音楽授業を実現しています。

後編では、この環境の上に設計された5つのステップの授業と、そこから見えた生徒たちの変化をご紹介します。

→ 後編「授業の設計と生徒の変化」へ


取材協力:菅利行先生(春日井市立高森台中学校・音楽科)